中小企業診断士の将来性は?2026年度の動きを探る

2026年2月時点の情報です


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2026年度から試験制度が大きく変わる

中小企業診断士の資格取得を検討されている方にとって、2026年度は特別な年になります。

令和8年度(2026年度)から、中小企業診断士試験における重要な制度改正が実施されることが正式に発表されました。最も注目すべき変更は、二次試験の口述試験が廃止されることです。この変更は、受験者にとっては負担軽減となる一方で、試験の評価軸が変化することを意味しています。

本記事では、2026年度以降の中小企業診断士を取り巻く環境について、試験制度の変更点、市場での需要動向、そしてキャリア戦略の観点から詳しく解説します。


2026年度試験制度改正の全容

項目 現行制度 2026年度(令和8年度)〜
二次口述試験 実施(筆記合格者のみ) 完全廃止
評価の重み 筆記 + 面談での補完 筆記試験の一発勝負
一次受験料 15,300円 17,200円(増額)
二次受験料 17,000円 15,100円(減額)

※受験料総額(32,300円)に変更はありません。

口述試験廃止の背景

中小企業庁および一般社団法人日本中小企業診断士協会連合会は、令和8年度から二次試験における口述試験を廃止すると発表しました。

この改正の背景には、複数の要因が存在します。

まず、口述試験の形骸化が指摘されています。過去10年間のデータを見ると、口述試験での不合格者は欠席者を除けばほぼゼロで、年間で3名程度に留まっています。この状況から、適性評価としての機能を果たしていないという判断に至りました。

次に、試験運営コストの増加です。人件費や会場費の高騰により、指定試験機関の財政状況が悪化していました。新型コロナウイルス感染症対策や、令和5年度の台風6号による再試験実施といった臨時的経費も重なり、抜本的な見直しが必要となったのです。

受験手数料の改定内容

口述試験廃止に伴い、受験手数料も見直されます。

一次試験と二次試験の合計額は従来の32,300円のまま維持されますが、配分が変更されます。一次試験の受験料が15,300円から17,200円に増額される一方で、二次試験は17,000円から15,100円に減額されます。

受験料総額は変わらないため、全体としての受験者負担は増加しません。むしろ、口述試験のための交通費や宿泊費が不要になることを考えると、実質的な負担は軽減されると言えます。

一次試験の大幅値上げは、「とりあえず受験」層を振り落とし、本気度の高い層を一次から選別する狙いが見て取れます。

二次試験の評価軸の変化

口述試験廃止により、二次試験は筆記試験のみで最終合格が決定されます。

これは、評価の重心が大きく移動することを意味します。これまでは筆記試験で不十分だった部分を口述試験で補完する機能がありましたが、今後は筆記試験の解答に、与件文の分析から結論までの一貫した論理構造がより厳密に求められるようになります。

近年の二次試験では、「キーワード採点との相関低下」が指摘されています。単に予備校のキーワードを詰め込むのではなく、因果関係の論理性や戦略の一貫性が高く評価される傾向が強まっているのです。


中小企業診断士の市場需要はどう変化しているか

登録者数と合格者数の推移

現在、日本全国の中小企業診断士の登録者数は約31,000人超となっています。

過去のデータを見ると、登録者数は継続的に増加しています。年間の合格者数は、一次試験で約5,000人前後、二次試験で約1,500人前後で推移しており、毎年2,000人程度が新たに登録される計算です。

令和6年度(2024年度)の試験結果を見ると、一次試験の合格率は27.5%、二次試験の合格率は約18%前後となっています。合格率は近年、一次試験で20〜30%の範囲で推移しており、特に2019年以降は30%前後で推移する傾向が見られます。

現役診断士が感じる需要の実態

中小企業診断協会が実施した「データで見る中小企業診断士」の調査によると、現役の中小企業診断士の6割以上が今後のコンサルティング需要の増加を見込んでいます。

具体的には、「伸びると思う」が32.0%、「徐々に伸びると思う」が29.0%で、合計61.0%が需要増加を予測しています。一方、「減少すると思う」「徐々に減少すると思う」という回答は1割程度に留まっています。

この結果は、実務の最前線で活動する診断士たちが、実際の案件獲得や企業からの相談を通じて需要の高まりを実感していることを示しています。

需要が高まる分野とは

注力分野 市場背景 診断士に期待される役割
事業承継・M&A 2025年問題(経営者高齢化) 磨き上げ(企業価値向上)、マッチング支援
DX推進支援 デジタル化の遅れによる競争力低下 IT導入補助金活用、業務プロセス再構築
補助金活用アドバイス 再構築補助金等の継続的なニーズ 採択率を高める事業計画書の策定代行

中小企業を取り巻く経営環境は複雑化しています。

中小企業庁の調査によれば、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人に達し、そのうち約半数の127万人は後継者が未定と推計されています。この事業承継問題は、中小企業診断士に対する需要を押し上げる重要な要因です。

また、デジタルトランスフォーメーション(DX)支援、補助金活用支援、M&Aアドバイザリーなど、専門性の高い領域での需要も拡大しています。これらの分野では、経営全般に関する知識を持つ中小企業診断士の役割が特に重視されています。


AI時代における中小企業診断士の立ち位置

AIに代替されにくい業務特性

野村総合研究所とオックスフォード大学が2015年に公表した共同研究では、中小企業診断士の業務がAIに代替される可能性は0.2%と極めて低いという評価が示されました。

この理由は明確です。中小企業診断士の業務の核心は、企業経営者との信頼関係構築、複雑な経営課題の本質把握、そして経営者を説得し行動を促すコミュニケーション能力にあります。これらはAIが最も苦手とする領域です。

特に重要なのは、コンセプチュアルスキル(概念化能力)とヒューマンスキル(対人関係能力)です。AIは大量のデータ処理や知識の検索では人間を上回りますが、クライアントのニーズに合わせた柔軟な抽象化や、経営者の感情に配慮した助言の提供は困難です。

求められる専門性の変化

一方で、AIの発展により、中小企業診断士に求められるスキルセットは変化しています。

単なる知識の提供やデータ分析だけでは差別化が難しくなっています。むしろ、AIツールを活用しながら、経営者とともに課題を発見し、実行可能な戦略を共創するファシリテーション能力が重視されるようになっています。

また、特定の業界や分野に深い専門性を持つことの重要性が高まっています。中小企業診断士の資格と、自身の得意分野や他の資格を組み合わせることで、より高い市場価値を築くことが可能です。


独占業務がない資格の将来性をどう考えるか

比較項目 企業内診断士 独立診断士
主な活動 経営企画、昇進、副業 コンサル、講師、執筆
メリット 安定収入 + 社内評価UP 高年収の可能性 + 時間の自由
課題 実務ポイントの維持コスト 営業力・集客力が必須

独占業務の有無と資格価値の関係

中小企業診断士には独占業務が存在しません。

税理士や弁護士のように、資格保有者のみが行える業務が法律で定められているわけではないため、資格がなくても経営コンサルティング業務を行うことは可能です。この点から、「資格価値が低いのではないか」という疑問を持つ方もいるでしょう。

しかし、独占業務の有無だけで資格の将来性を判断するのは早計です。

実務の現場では、中小企業診断士の資格は「一定レベル以上の経営知識と実務能力を持つ証明」として機能しています。特に、行政の補助金審査委員や専門家派遣事業では、中小企業診断士資格が実質的な要件となっているケースが多く見られます。

企業内診断士のキャリア価値

企業に勤務しながら中小企業診断士資格を活用する「企業内診断士」も増加しています。

令和6年度の試験データによると、合格者の64.1%が民間企業に勤務しています。企業内では、経営企画、新規事業開発、営業戦略立案などの部署で資格が活かされています。

資格取得によって、社内での評価向上、昇進・昇格の機会増加、部門を越えた異動の実現など、キャリアの選択肢が広がったという声が多く聞かれます。資格を取得することで、経営的視点を持つ人材として社内での存在価値が高まるのです。


2026年度受験を検討する方への実務的アドバイス

試験日程の予測と準備計画

2026年度の試験日程は2026年4月上旬に正式発表される見込みですが、例年の傾向から予測が可能です。

一次試験は8月第1週の土日、具体的には8月1日(土)・8月2日(日)に実施される可能性が高いでしょう。二次試験(筆記のみ)は10月下旬の日曜日、おそらく10月25日(日)に実施されると予想されます。口述試験が廃止されるため、最終合格発表は従来より早まり、2027年1月中旬頃になると見込まれます。

受験申込期間は例年4月下旬から約1ヶ月間です。2025年度からインターネット申込に完全移行したため、スムーズな申込が可能になりました。

学習戦略の立て方

中小企業診断士試験の合格に必要な学習時間は、一般的に1,000時間以上と言われています。

一次試験は7科目と範囲が広いため、計画的な学習が不可欠です。特に、経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論といった基礎科目を早期に固めることが重要です。科目合格制度を活用し、3年間で段階的に合格を目指す戦略も有効です。

二次試験対策では、2026年度からの評価軸の変化を意識する必要があります。キーワードの暗記だけでなく、与件文の分析力、論理的な文章構成力、戦略の一貫性を重視した学習が求められます。

予備校・通信講座の選択

独学での合格も可能ですが、効率的な学習のためには予備校や通信講座の利用が推奨されます。

特に働きながら学習する社会人にとって、スキマ時間を活用できる通信講座は有力な選択肢です。近年は、スタディング、診断士ゼミナール、LECなど、多様な講座が提供されており、費用も年々リーズナブルになっています。

重要なのは、教材選びに時間をかけすぎないことです。信頼できる講座を一つ選んだら、それを徹底的にやり込むことが合格への近道です。


資格取得後のキャリア展開

独立開業の現実

中小企業診断士として独立開業する道を選ぶ方も一定数います。

ただし、資格を取得したからといって、すぐに案件が舞い込むわけではありません。営業活動、人脈構築、専門分野の確立など、資格取得後も継続的な努力が必要です。

友人の中小企業診断士の話を聞くところ、独立後数年は収入が不安定な時期が続くケースが多いようです。しかし、特定の業界や分野で実績を積み、顧客基盤を築くことができれば、安定した収入と自由な働き方を実現できる可能性があります。

資格維持のコストと要件

中小企業診断士の資格は5年ごとの更新制です。

更新には、「専門知識補充要件」として5回以上の研修受講と、「実務要件」として30日以上の実務従事または実務補習の受講が必要です。また、診断士協会への入会費用や年会費も発生します。

これらの要件を満たすには、一定の時間とコストがかかります。資格を取得しても更新せずに失効する方が毎年一定数存在するのは、この負担が理由の一つです。資格取得を検討する際は、更新要件も含めた長期的な視点が重要です。

女性診断士への期待の高まり

中小企業診断士の世界は男性が多数を占めていますが、女性診断士への需要は確実に高まっています。

統計データによれば、女性の合格者は全体の約1割未満と少数ですが、だからこそ市場での希少価値が高いのです。

特に、SNS活用やブランディング、女性経営者への助言など、女性ならではの視点が求められる分野では、女性診断士への依頼が増加しています。専門家派遣事業においても、適任の女性診断士を探すことが困難なほど需要が高まっています。


地域による市場環境の違い

都市部と地方の需給バランス

中小企業診断士の地域分布は極端に偏っています。

令和6年度の試験データによると、受験者・合格者ともに東京が圧倒的に多く、大阪がそれに続きます。全国約31,000人超の登録者のうち、東京を中心とした都市部に多くの診断士が集中していると見られています。

一方、地方では診断士の数が非常に少ない状況です。例えば、地方の診断士協会の中には会員数が10名程度という地域もあり、全国で見ても登録者が少ない地域が存在します。地方では診断士の知名度も低く、企業は都市部のコンサルタントに相談するケースが多いようです。

地方でのビジネスチャンス

しかし、この状況は見方を変えれば大きなチャンスです。

地方では競合が少ないため、適切な営業活動と実績構築ができれば、地域で唯一の専門家として確固たる地位を築くことが可能です。行政の支援事業や商工会議所との連携など、地域に根ざした活動の機会も豊富です。

特に、地方創生や地域経済活性化の重要性が増す中、地方で活動する中小企業診断士への期待は高まっています。


市場価値を高めるための戦略

複数の専門性の掛け合わせ

中小企業診断士資格だけで差別化を図るのは難しい時代です。

資格を最大限に活かすには、自身の得意分野や他の資格・経験と組み合わせることが重要です。例えば、IT業界での実務経験を持つ診断士はDX支援で強みを発揮できますし、製造業出身であれば生産管理や品質管理の分野で専門性を打ち出せます。

また、中小企業診断士と税理士、社会保険労務士、行政書士などの他士業資格を併有することで、ワンストップでサービスを提供できる体制を構築する方法もあります。

継続的な学習とスキルアップ

資格取得はゴールではなく、スタートです。

経営環境は常に変化しており、新しい経営手法や制度が次々と登場します。診断士として活躍し続けるには、継続的な学習が不可欠です。

診断士協会が提供する研修プログラムの活用、業界セミナーへの参加、専門書の読書など、様々な方法でスキルアップを図ることが重要です。特に、デジタル技術、SDGs、事業承継といった現代的なテーマについての知識を深めることが求められます。


2026年度以降の展望

2026年度からの試験制度改正は、中小企業診断士試験の質的な転換点となります。

口述試験の廃止により、二次試験では論理的思考力と文章表現力がこれまで以上に重視されます。この変化は、形式的な知識の暗記ではなく、真の実務能力を持つ人材を選抜する方向へのシフトを意味しています。

市場環境を見ると、中小企業を取り巻く課題は深刻化しており、専門家への需要は確実に存在します。事業承継問題、DX推進、経営の持続可能性確保など、中小企業診断士が貢献できる領域は広がっています。

ただし、資格を取得すれば自動的にキャリアが開けるわけではありません。独占業務がないからこそ、自身の専門性を磨き、実務経験を積み、市場での価値を高める継続的な努力が求められます。

中小企業診断士という資格は、あなたのキャリアを大きく広げる可能性を秘めています。2026年度の試験制度改正を機に、この資格の取得を検討されている方は、長期的な視点でキャリア戦略を描いてみてはいかがでしょうか。

試験制度は変わっても、「企業の成長と再生を支援する専門家」という診断士の本質は変わりません。本質的な能力を磨き、社会に貢献できる診断士を目指すことが、将来にわたって活躍し続けるための鍵となるでしょう。


この記事が、あなたのキャリア選択の一助となれば幸いです。

2026年度から口述試験がなくなることで、合格は難しくなりますか?

合格率自体は大きく変わらないと予想されますが、評価が筆記のみになるため、「論理的一貫性」への要求はよりシビアになります。面接での挽回が不可能になる分、記述の精度を高める対策が必須です。

AIの進化でコンサルタントの仕事が奪われる心配はありませんか?

データの分析やレポート作成は効率化されますが、経営者の「心の葛藤」を汲み取り、最終決定を後押しするヒューマンスキルはAIには代替できません。むしろAIを使いこなす診断士の需要は高まっています。

独学でも2026年度の合格は目指せますか?

可能です。ただし、二次試験の評価軸が変わる過渡期であるため、最新の傾向を反映した通信講座(スタディングなど)を併用するほうが、情報のキャッチアップ速度と学習効率の面で圧倒的に有利です。

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